馬頭観世音菩薩とは、馬の守護神として知られる仏さまです。他にも、「馬頭明王(めずみょうおう)」と呼ばれています。
馬が草を食べるように、人々の煩悩を食つくし、災難を取り除いてくれるといわれています。
仏教では、現世の行いにより死後にめぐる世界が六つに分かれると考えられています。この世界のことを「六道(ろくどう・りくどう)」と呼んでいます。
六つの世界は、楽しみや幸福が多い世界から順に、天道(てんどう)・人間道(にんげんどう)・修羅道(しゅらどう)・畜生道(ちくしょうどう)・餓鬼道(がきどう)・地獄道(じごくどう)に分けられています。
畜生とは鳥や獣、虫などを意味しており、畜生道は生前、動物や植物などの生き物を大切にしなかったり、命を粗末にしたりした人が生まれ変わる世界です。
知性がなく、本能のみで生きているため、いつになっても仏の教えを得ることができません。さらに弱肉強食の世界であり、強い物の恐怖に怯え、救いはなく苦しみが多い世界だと考えられています。
馬頭観世音菩薩は、憤怒の相で畜生道に生まれた人々を見つめ、救済する仏なのです。
また、馬頭観音は「観音菩薩」が変化した姿でもあります。観音菩薩は「音を観る(=人々の声を聞く)」仏さまであり「その人に合った救いの手を差し伸べる」と考えられています。
馬頭観世音菩薩のご利益には、無病息災 厄除け 動物救済 五穀豊穣 道中安全、旅行安全などがあります。
さらに「馬=俊足」のため、即効性があり、悩んでいることもすぐに解決するというご利益もあります。
他にも、大切なペットを失った後に馬頭観世音菩薩に祈りを捧げると、ペットたちをお釈迦さまのもとまで連れて行ってくれるともいわれ、動物供養の仏さまとしてもひろく知られています。
さらに馬頭観世音菩薩は、人間を救うだけでなく人々の生活になくてはならない存在である「家畜の安全と健康を祈る仏さま」だとも考えられています。
中でも、馬は武家では戦に出向き、農家では農耕を務め、人々の移動手段としても活躍する存在であり、人々の生活とは切っても切れない動物。そんな馬を掲げた姿であるため、いつしか馬の守り神としても信仰されるようになりました。
また馬頭観世音菩薩は、五穀豊穣や道中安全の観音菩薩としても親しまれています。
また、馬頭観世音菩薩は、六観音の一つに数えられます。六観音というのは、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天の六道に生きる者たちを救う観音菩薩たちのことです。それぞれの道に一尊ずつ担当となる観音菩薩がおり、馬頭観世音菩薩は畜生道を担当しています。
ちなみに、その他の観音菩薩たちの担当は以下の通りとなっています。人間道の観音菩薩は、天台宗系と真言宗系で異なるので、「七観音」と呼ばれることもあります。
地獄道 聖観音
餓鬼道 千手観音
畜生道 馬頭観音
修羅道 十一面観音
人間道 准胝(じゅんてい)観音・不空羂索(ふくうけんじゃく)観音
天 道 如意輪観音